デザイナーに聞いた新旧N-BOXの違い。王座盤石? メッキ激減のカスタムは吉か凶か
掲載 更新 carview! 文:編集部/写真:小林 俊樹、本田技研工業 90
掲載 更新 carview! 文:編集部/写真:小林 俊樹、本田技研工業 90
8月3日、ホンダは3代目となる新型「N-BOX」を特設サイトで公開した。発売は今秋を予定している。
N-BOXは2011年に初代が誕生。ガソリンタンクを前席下に配置するホンダ独自の「センタータンクレイアウト」を採用し、圧倒的な室内空間や高い動力性能、質感を武器に、軽自動車の概念を覆すモデルとして登場した。第二期ホンダF1に携わったメンバーが開発に参画したことも当時話題となった。
2017年に現行となる2代目がデビュー。広い室内空間や高い質感はそのままに、「Honda SENSING(ホンダ・センシング)」などの安全装備を採用し総合力を高め、現在まで8年連続で軽四輪車販売台数No.1を獲得。軽スーパーハイトワゴン市場のシェアは30%以上と、まさに日本の“国民車”へと成長した。
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今回発表された新型N-BOXのコンセプトは「ハッピー・リズム・ボックス」。運転のしやすさや大空間、使い勝手などを磨きつつ、Honda SENSINGのアップデートやコネクト機能の追加など、時代の求める装備を投入しているという。
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エクステリアの担当デザイナーによると、歴代N-BOXは“安心感”が支持されてきた理由と分析。そこで新型は、全体のサイズ感やグラスエリアとボディの比率はほとんど同じで一目でN-BOXとわかるスタイルを保ちながら、サイドパネルのふくよかさやバンパーコーナーの形状、Cピラーの形状ーー先代の“C字”から“J字”に変更ーーなどを工夫することで、ボリューム感や踏ん張り感を強めたという。
さらに、瞳のようなヘッドランプやカドマル的なディテールで親しみやすさや安心感を演出している。実車を前にすると、パッと見は先代と同等ながら、全体を通じてシンプルでオシャレ家電のような“良いもの感”が強まった印象だ。
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注目はノーマルに設定された「ファッションスタイル」だ。
ツヤ感を抑えたクリーム系のボディ色「オータム・イエロー」を初設定したほか、「ステップワゴン」でも採用された「フィヨルドミスト・パール」などを設定し、サイドミラーカバーやホイールキャップ、ドアハンドルのカラーチェンジで遊び心を演出するなどオシャレ感を強めている。
「ファッションスタイル」を用意することで、新型はユーザーの間口をさらに広げた格好だ。オシャレ系スライドドアの軽自動車をラインアップしないホンダにとって、快進撃を続けるダイハツ「ムーヴキャンバス」やスズキ「ワゴンRスマイル」への対抗馬を手に入れたことになる。
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一方のカスタムは大胆にイメージチェンジを果たした。「品格とハイパフォーマンス」がキーワードで、「ダイレクトプロジェクション式LED」やシーケンシャルウインカー、ヘッドライトとグリルを繋ぐ一文字のライトなどでメカニカル感を強調し、メッキパーツはグリルの縁取り程度でほとんど採用されていない。
この結果、先代やライバルとは異なり威圧感や”オラオラ”した雰囲気は鳴りをひそめ、“一般的なカスタム”のイメージからは距離を置いている。
担当デザイナー曰く「他者への威圧感ではなく、親しみやシンプルさが求められている時代。そこへ向け意志を持ってイメージを変えている」とのことだ。なお“メッキ好き”のために純正アクセサリーも豊富に用意しているとのこと。
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インテリアは、先代までの強みをブラッシュアップした印象だ。スペース的には先代と同等ながら、後席のショルダールームを+55mm拡大したほか、シートバックの一部をえぐることで、自転車を積んだ際の安定性を高めているという。
パッケージング担当者によると「センタータンクレイアウトを採用することで、後席を畳んだ際のシート高を抑えているのがN-BOXの特徴。天井も極力平らにして、ラゲッジの高さも従来と同等にすることで積み込みやすさも工夫している。ライバルは『アップハンドル』の大人用自転車が積めない場合もある。子どもの送り迎えなどで毎日自転車を積むユーザーも多く、日々の利便性のために譲れないポイントだった」という。
デザイン面では、ダッシュボードを水平基調とすることで車幅感覚を掴みやすくし、メーター画面をハンドル内で見せる「インホイール式」を採用することで、視界も従来より拡大させているほか、「サイドビューサポートミラー」の使い勝手も向上させている。
また、シート端の素材を切り替えることで汚れが目立ちにくい工夫も施しているほか、この素材(色)の切り替えは車内が広く見える効果もあるという。前席ショルダー部分に段差を設けることで後席の視界もよくなり、2代目オーナーが乗れば一目で違いがわかるほど広く感じるようになっているとのことだ。
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前出のエクステリア担当デザイナーに、日本一売れているクルマのデザインは大変だったんじゃないか? と聞いてみたところ「1位を守り続けるプレッシャーはあるが、N-BOXはデザインの土台がしっかりしているので、造形を磨き上げることに集中できた。飛び道具を使う必要はなく、すっきり・上質のために形を練り上げることに時間を割けた」と話してくれた。
ちなみに余談だが、新型N-BOXの担当デザイナーはフィットRSも担当した人物。細かなディテールまで気を配る氏の丁寧な仕事ぶりが、新型N-BOXでも遺憾無く発揮されている。なお、そんな氏が一番気に入っているのはファッションスタイルだそうだ。
<フィットRSのデザインに関する話はこちら>
>>新型フィットRSは気持ちのいい爽快な走りが魅力。これぞ“ちょうどいい”スポーティフィットだった
一抹の不安があるとすれば、オラオラ感が薄まりロゴまで変化した新生カスタムの存在だろう。カスタムとノーマルの販売比率は6:4を想定しているといい、万が一威圧感を抑えシンプルさを追求したカスタムがこけてしまうようなら日本一の称号も失いかねない。
新型の圧倒的な商品力とセンスの良さは多くの人が認めるだろうが、”カスタム”を求める層とのギャップが生じる可能性も。時代を的確に捉えた先見の明となるか、カッコいいものを作りたいデザイナーのエゴで終わってしまうのか、結果は秋以降にわかることとなる。
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